気血を調整し、経絡を整え、五臓六腑の働きを改善することにより、自然治癒力(免疫力)の回復を図る。
脉診の歴史は長く、その方法も多様多彩にわたっておりますが、経絡治療では六部定位脉診を用います。これは、難経十八難にその原型が打ちだされ、時代と共に変遷しつつ伝承され、経絡治療がとなえ出された際、その脉診法として採用されたものであります。経絡治療においては、診察、診断の始めから治療終了に至るまで、脉診がその主役を果たしているのであります。すなわち、望・聞・問・切の診断法も、この脉診によって主証が決定し、補瀉迎随の治療も脉診に導かれて、目的を果たすことができるのであります。
古代中国において、人の身体には、生命エネルギーを循環させる“経絡”があるとし、その内外を気血が流れていると考えられていました。生命エネルギーである気血が“経絡”という身体の通路を、とどこおりなく循環していることが、とても重要だとされていました。
生命エネルギー(気血)の流れが悪くなり、経絡のバランスが崩れ、身体の五臓六腑(※)へ生命エネルギー(気血)がゆきわたらなくなると、五臓六腑の働きが乱れ、その結果、さまざまな病の症状が発症すると考えられています。(※)五臓(肝・心・脾・肺・腎)、六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)
生命エネルギー(気血)が足りない経絡には「補法」といって、生命エネルギー(気血)を補い、生命エネルギー(気血)が過剰になって飽和状態にある経絡には「瀉法」といって、余分な生命エネルギー(気血)を取り除く鍼をします。
脉診流経絡治療では、脉診を中心とした診察により、身体の経絡(五臓六腑)の状態を把握し、「証」という病の根本原因(経絡の乱れ)を探り出します。その「証」に応じて、手足に「補法」や「瀉法」をおこない、病の根本原因をただしていきます。つまり、経絡バランスを整えることにより、五臓六腑の働きを改善し、自然治癒力(免疫力)を高め、身体をもとの元気な状態に戻していきます。
この「証」に応じた鍼(補法や瀉法)を本治法と言い、脉診流経絡治療では、もっともたいせつな部分です。ややもすると、病のある局所に目がいくものですが、この本治法に主体を置くことにより、他の鍼灸術では得られない高い治療効果をもたらすことができるのです。この本治法の習得こそが、脉診流経絡治療をせいするカギとなるため、当会では多くの時間をかけ、手から手へ伝承する技術指導をおこなっています。