こちらのページをご覧の皆様は、『帯状疱疹(たいじょうほうしん)』という病気をご存じでしょうか?気がつくと、体の左右のどちらかの片側に、帯のように水ぶくれ(水疱:すいほう)のあつまりができ、痛みを伴うような病気で、水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスの感染により発症します。
私達は子供の頃、ほとんどの人がみずぼうそう(水痘)にかかります。しかし、みずぼうそうがなおっても、このウイルスは、顔にめぐってる三叉神経や体の皮膚をめぐる知覚神経の根もとの知覚神経節に、遺伝子の形で潜伏しています。それが長い期間を経て、ストレスや過労などで、体の抵抗力が低下すると、神経節内で遺伝子の形からウイルス粒子にかわって増殖し、再び活動をはじめ、神経をつたわって皮膚にあらわれて炎症をおこします。このような症状を『帯状疱疹』と言います。
症状は、まず神経痛のような痛みがおこり、その4、5日後に、その部分に虫に刺されたような赤い発疹ができ、次第に帯状に並ぶ水疱にかわります。その後、水疱が化膿し、瘡蓋(かさぶた)となり、数日から約3週間ぐらいでなおります。免疫力が非常におちていると、全身にみずぼうそうと同じような発疹があらわれたり、熱がでることもあります。また、深い潰瘍を作り、痕(コン:きずあと)になってしまうこともあります。
痛みの程度は、痛みがまったくない、または夜も眠れないような激しい痛みがあるなど、さまざまな程度がありますが、一般に、基礎疾患のある人や高齢者の症状は激しく、発疹は治っても、半年から数年以上痛みが続くこともあります。また、糖尿病や副腎皮質ステロイド薬を投与されている患者様の場合には、最初は痛みを感じなくても、1~2週間後に激しい痛みを伴うことがあります。患者様のうち、約1%の方は、1回以上、帯状疱疹になると考えられています。
このたび、施術させていただいたHさんは、そのような患者様のうちの御1人で、そのHさんからご相談の電話を受けたのは、例年になく、桜が早く開花したゴールデンウィーク明けの、晴れた日の午後でした。Hさんはやせ型で、60歳代の年代にしては珍しい、身長160㎝ほどの長身の主婦。肩こりの治療と健康維持の目的で、私の治療室に何年も通っていらっしゃる方で、電話にて詳しいお話を伺うと「3日前より、右脇から背中にかけてブツブツができて、痛みも少しでてきたので、病院へ行って来ました。帯状疱疹と診断されて薬を処方されたけれど、あまり良くならないので、はり治療で何とかできませんか?」というお話でした。私としては、上手く治癒に導くことができるかどうか、自信はありませんでしたが、少しおもいあたることがあったのと、さほど重症の帯状疱疹ではないようなので、私の治療室に来ていただくことにしました。
おもいあたることとは、内地では、この頃は、すでに初夏にはいっていますが、北海道は、まだ春になったばかりの5月。春先などには、帯状疱疹や神経痛の方が、よく来院されました。そのことが、ふと頭をよぎり(少しは、Hさんの苦痛を和らげてあげることができるかもしれない)とおもい、施術することにしました。患部を診ますと、たしかに右脇から背中にかけて帯状疱疹が出てました。Hさんは「以前にもこういう湿疹が出たことがありました。そのときは、処方された薬で良くなったけれど、このたびは、薬を服用してもあまりかわりがありません」と、おっしゃっていました。
東洋医学では、季節と内臓の働きには大きな関係があると考えます。春と関係のある内臓は肝臓。このことから、私はこのように考えました(肝臓のバランスをととのえてあげることで、Hさんの帯状疱疹を改善させることができるのではないか?)。それで、そのような考えにあった治療をおこないました。幸い、治療終了後には「ブツブツが半分ほど消え、重い感じの痛みは半分ほどとれて楽になってきました」ということを、おっしゃってました。
それで、治療を4回ほど続けていくうちに、帯状疱疹は良くなりました。Hさんより「助かりました。ありがとうございました」という、おもいがけないお礼のお言葉をいただきました。
おもいの他、早く治ったので、こちらも安堵しました。
帯状疱疹などの症状は、なおるまでに長くかかる患者様もいらっしゃいます。このたびは、Hさん自身の免疫力が、あまりさがっていなかったので、このような良い結果になったのではとおもっております。
最後になりましたが。こちらのHさんの病状を参考に、季節と内臓の関係について、少し書かせていただきます。
東洋医学では、内臓の働きといろいろな自然が、ふかくかかわりをもっていると考えます。内臓と季節との関係もそのうちの1つで、季節の移ろいと一緒に、その働きが強くなる臓腑と弱くなる臓腑があると考えます。具体的に説明しますと、春には肝臓のエネルギーが強くなり、夏には心臓のエネルギーが強くなります。秋には肺のエネルギーが強くなり、冬には腎臓のエネルギーが強くなると考えます。腎臓は、水(すい)と関係がふかいことから、身体内でコントロールが難しくなると、冷え症にもなやすく、その諸症状でお困りの方がたくさんいらっしゃいます。
東洋医学では、季節に応じたエネルギーを、私達が上手にとりいれることができた場合には、健康な1年を過ごすことができると考えます。ところが、何らかの理由で、季節が生みだすエネルギーを、上手にとりいれることができなかったり、使うことができなかったり、逆に、その影響を強く受けすぎたりすると、私達の心と体は、いろいろな形で不調をおこすことが考えられます。「春になると、何だか体がかゆくなる」とか、あまり知られていませんが「夏の頃には、心臓病で倒れる人が多い」という話も聴いたことがあります。「秋のはじめには、風邪をひきやすい」「喘息の発作がひどくなる」などという患者様もいらっしゃいました。
私は(このたび来院されたHさんは、季節の影響を受けて帯状疱疹が出たのではないか?)という考えにより、施術させていただきました。それで、はり、きゅう治療により免疫力が高められるという作用を十分に発揮させることで、症状を和らげることができるとおもい、肝臓のバランスをととのえる治療させていただきました。
こちらのページをご覧の皆様、心と御体に何かの悩みがありお困りの方は、どのような小さな悩み事だとしてもよいので、1度、私達に相談してみませんか?メールまたは電話などで、各地の東洋はり医学会の会員に、ご相談してみてください。ご来院もおまちしております。
◯私達がおこなう、はり、きゅうの経絡治療は、きっと皆様のQOL=Quality of life(生活の質、生命の質)の向上に、おやくにたつことができるとおもっています。
(備考1)
本欄で、紹介させていただいたような患者様が、すべてはり、きゅう治療で改善されるというものではありません。私達は、家庭医などのお医者様とともに、皆様の健康維持、健康管理に参与させていただくものであります。患者様皆様におかれましては、ご自分の健康状態にいつも関心をおもちいただくとともに、医療機関や、私達、はり師、きゅう師を適切にご利用していただければ幸いに存じます。
(備考2)
本欄は、患者様の許可を得て掲載させていただいているものであります。許可のない健康情報、医療情報を、本欄に載せることはありませんので、安心して本院のはり、きゅう施術を受けていただきたいとおもっています。
文章:宍戸 尚

